地理歴史(地歴)と公民。保護者の方には、何やら聞き慣れないかもしれないこの名前。これは高校で社会科に相当する教科名のことです。今、全国でこの地歴の単位が不足している高校生が多くいることが発覚しています。背景には、高校の複雑な授業の仕組みとゆとり教育によるしわ寄せがあるのです……。
受験で不要だから履修しない!?
学習指導要領(高校)では、世界史を必修とし、さらに日本史か地理のどちらかを履修するよう定めています。つまり、高校3年間で「世界史+日本史」か「世界史+地理」のどちらかの組み合わせで学ばなければいけないのです(公民に関しては、「現代社会」または「政治・経済」・「倫理」を履修する必要あり)。
ただ、必修や選択など複雑な履修の決まりが定められているのは理科も同じ。にもかかわらず、なぜ地歴で履修不足が起きたのでしょうか?
理由は、大学入試で地歴の科目を2つ同時に受験することが出来ないからです。例えば、「世界史」と「日本史」の2科目を勉強しても、大学入試で受験できるのはどちらか1科目だけ。このため多くの高校生が、勉強する範囲や量の多い世界史を敬遠し、比較的内容の少ない日本史や地理を好む傾向にあります。高校側もそれを黙認して、必修であるはずの「世界史」の授業を行わなかったのです。
背景にはゆとり教育によるしわ寄せが……
履修不足の問題が起きた背景には、ゆとり教育で高校にも、総合的な学習の時間や学校週5日制が導入されたことによる授業時間不足の問題があります。
このため多くの高校では、土曜日に補習授業を行ったり、新たに「7時間目」の授業を設けるなど、授業時間を確保するためあれこれ苦労をしているのです。中には50分の授業を48分にして、その分授業回数を増やしたりする高校も登場するほど。
そう、授業時間確保のため「苦肉の策」として必修外しが行われていたのです。もちろん、「ルール」はルール、守らなければいけません。真面目に世界史を学習している生徒にとっても、この問題はアンフェアということになってしまいます。一方、この問題のために350時間も補習授業を受けなければいけない高校生もいるとか……。
勉強は決して「受験のためだけ」にあるわけではありません。広くたくさんのことを学び、教養をつけることも勉強の目的の一つ。しかし、今、学校現場にはそのゆとりがないのです。
18の春を泣かせないためにも、文部科学省や教育委員会には、ぜひとも再発防止策をお願いしたいです。
参考URL
http://allabout.co.jp/children/hsexam/closeup/CU20061029A/index.htm