今回は確率別の収束速度について解説させて頂きます。
目次
コインゲームの期待値
まずは直感でも分かり易い、コインゲームの期待値を考えてみたいと思います。
★コインゲームのルール
表が出たら200円貰える
裏が出たら100円支払う
このコインゲームの1プレイ当たりの期待値は幾らでしょうか?
答えは、
期待値= ( 1/2 × -100円 + 1/2 × +200 ) × 1回 = +50円 となります。
このコインゲームでは直感的に期待値がプラスだと分かり易いかと思います。
サイコロゲームの期待値
では次に、サイコロゲームの期待値を考えてみたいと思います。
★サイコロゲームのルール(※6面体のサイコロ)
1が出たら800円貰える
1以外が出たら100円支払う
このサイコロゲームの1プレイ当たりの期待値は幾らでしょうか?
答えは、
期待値= ( 5/6 × -100円 + 1/6 × +800 ) × 1回 = +50円 となります。
先ほどのコインゲームと同じ+50円の期待値ですが、コインゲームと比べると直感的には分かりにくかったかと思います。
ゲームに参加するべきか?
では、この期待値が+50円のコインゲーム又はサイコロゲームに参加するべきでしょうか?
答えは、
プレイできる回数による
が正解となります。
両ゲームとも1プレイ当たりの期待値はプラスですが、プレイできる回数が例えば
10回だけと決まっているのであれば参加するべきではありません。
最低200回程度プレイできるのあれば、このゲームには参加するべきでしょう。
なぜなら試行回数(プレイ回数)が少ない内は、運の要素が非常に強く、1プレイ当たりの期待値がプラスのゲームでも偶然運悪く負けてしまう事がありえるからです。
試行回数が多くなれば多くなる程、ゲーム本来の確率(理論値)に収束します。
このことを大数の法則と呼びます。
※冒頭の場合 コインゲームの勝率(理論値)=1/2 サイコロゲームの勝率(理論値)=1/6
確率の収束と大数の法則
それでは実際、どの様に確率が収束していくのかをグラフで見てみましょう。
エクセルで勝率20%・40%・60%のシステムを作成し、各システムの勝率と試行回数の関係をグラフにして表したものがこちらです。(試行回数1,000回を実施)
グラフを見て頂くと、回数が少ない内は偶然の要素(運)によって各システムの理論確率と乖離していますが、試行回数が増えれば増えるほど各システムの理論確率付近に収束している事が確認できます。(大数の法則)
試行回数が100回に満たない場合の勝率というのは全く当てにならない事が良く分かります。
この各システムはエクセルのランダム関数を使って作成していますので、乱数を変えたらどうなるか見てみましょう。
この様に、乱数を何度変えたとしても試行回数が多くなればなる程、各システムの理論確率付近に収束している事がわかります。
コインゲームとサイコロゲームのまとめ
という事で、ゲームに参加するべきかどうかの判断は、まずそのゲームの
1回当たりの期待値がプラス
である事、そしてそのゲームを
最低でも200プレイ
できる事、という2つの条件をクリアした場合のみ参加すれば良いという結論になります。
冒頭のコインゲームとサイコロゲームの期待値は+50円ですので、あとはプレイできる回数次第で参加するかどうかを判断すれば良いわけです。
この様に確率というのは試行回数が少ないうちは
偶然(運)が支配
するものであることをご理解頂けたかと思います。
確率別の収束速度についてはこちらの記事をご参照下さい。
確率別の収束速度
システムトレードにおける試行回数
システムトレードにおける試行回数とは取引回数の事です。つまり、取引回数が多くなればなるほどシステム本来の勝率に収束していくという事になります。
逆にいうと取引回数が200回に満たないシステムのバックテストというのはシステム本来の勝率に収束していない可能性が高いといえます。
つまり実力で利益を出しているシステムなのか、たまたま運よく利益を出しているシステムなのか判断できないという事です。
という事でシステム本来の勝率を判断する上で取引回数が非常に重要になってくる事が分かって頂けたかと思います。