Lotは固定した方が良い理由

今回はLotを固定させた方が良い理由について解説させて頂きます。偶然起こったトレード結果に対してLot数を変化させる事の無意味さを検証してみたいと思います。まず今回の記事ではは以下の2点について検証してみたいと思います。

  • Lot変化① = トレード結果が負けだった場合、次トレードはLotを2倍にする。
  • Lot変化② = トレード結果が勝ちだった場合、次トレードはLotを2倍にする。
Lot変化①となる心理状態としては、負けを取り戻そうと焦る心理あるいは、負けた後は勝つ可能性が高いのではないかと期待する心理状態です。
Lot変化②となる心理状態としては、ついてる時はついてるから勝てると期待する心理あるいは、勝った分を直ぐに複利で運用したいという心理状態です。
もちろんLot変化①も②も全て感情論で何の統計的根拠もありません。そのことをこれから証明していきたいと思います。

目次

Lot固定(勝率50%、PF(プロフィットファクター)1のシステム)の期待値分布

まずベンチマークとなるLot固定(15万通貨)の期待値分布がこちらになります。
※試行回数10回を1000セット実施した時の1セット当たりの期待値分布

Lot固定(15万通貨)の期待値分布 ※勝率50%、PF(プロフィットファクター)1、スプレッド0

※縦軸=該当システム数 横軸=金額(円)
このシステムの理論期待値は0円です。分布をみても期待値0円付近(-570円)を頂点とした正規分布になっている事が確認できます。0円未満の成績は運が悪かったと言えますし、0円超えの成績は運が良かったと言えます。
この様に運(偶然)は避けることの出来ない普遍的な事だということを理解する必要があります。
ではこの分布をベンチマークとしてLotを変化させた場合と比較していきたいと思います。

Lot変化①の場合の期待値分布(負けたら次ロットは2倍)

Lot変化① = トレード結果が負けだった場合、次トレードはLotを2倍にする。
※初期Lotを10万通貨として、負けた場合20万通貨にLotを変化させる。
※縦軸=該当システム数 横軸=金額(円)
赤い線がLot変化①の分布となっています。先ほどのLot固定の分布(青色)と比べると、山がつぶされて平たくなり、分布の幅が広くなっていることが分かります。
Lot固定の場合よりも偶然(運)による振れ幅が大きい=リスクが大きくなってしまっているという事を表しています。期待値平均も0付近(-1390円)でLot固定の場合と比べても特に優位性があるとはいえない事が確認できます。

Lot変化②の場合の期待値分布(勝ったら次ロットは2倍)

Lot変化② = トレード結果が勝ちだった場合、次トレードはLotを2倍にする。
※初期Lotを10万通貨として、勝った場合20万通貨にLotを変化させる。
※縦軸=該当システム数 横軸=金額(円)
緑の線がLot変化②の分布となっています。Lot固定の分布(青色)と比べると、こちらも山がつぶれて平たくなり、分布の幅が広くなっている事が分かります。
先ほどと同じく、Lot固定の場合よりもリスクが大きくなってしまっており、期待値平均も0付近(-730円)でLot固定の場合と比べても特に優位性があるとはいえない事が確認できます。

Lot固定とLot変化①・②の比較

この様にLotをトレード結果に応じて変化させたところで統計的優位性があるとは言えない事が分かりました。優位性が無いだけではなく、Lot変化させた場合は分布の形が左右非対称の山型となってしまっています。
私が統計分析する時はリスクの発生を標準正規分布で仮定して全て計算しています。標準正規分布とは平均0、標準偏差1となる下記の様な左右対称の山型グラフです。
という事でLot変化させたシステムを分析する場合、計算にズレが生じます。特に最大DDの予測などの分析結果にズレが生じてしまっては致命傷となる恐れもあります。
以上の事から、トレード結果に応じてLot数を変化させるメリットは無いと現在のところ私は思っています。
もし”勝率50%+リスクリワード1:1で利益が出せる資金管理方法”なんてタイトルがあったら、まず試行回数を確認してみて下さい。試行回数が数十回程度であればそれはただの資金管理によるカーブフィッティングである可能性が非常に高いです。
勝率50%に収束するには少なくとも400回程度の試行回数が必要です。
それでは最後に乱数を変えて分布がどのように変化するか確認してみましょう。
期待値分布(Lot固定 vs Lot変化)
何度乱数を変えても、トレード結果に応じてLotを変化させる事に優位性があるとはいえない事が分かります。

まとめ

口座を複利で運用する場合は、最低でも数月単位でLotを調整する必要があります。間違えてもトレードで利益が出たからといって直ぐに複利計算してLotを増やしてはいけません。
日々のトレードは単利で考えて、半年に一回複利になるようLot調整する位で丁度いいという事になります。
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