あらすじとしては、ある殺人事件に絡んだ少年・少女が成長していく過程のなか
での事件を淡々と。
最大の読者に考えさせる点は雪穂の太陽に変わるものが何だったか?
ですね。
「一日のうちには太陽の出ている時と沈んでいるときがあるわよね。それと同じように人生にも昼と夜がある。もちろん実際の太陽みたいに、定期的に日没と日の出が訪れるわけじゃない。人によっては、太陽がいっぱいの中を行き続けられる人がいる。ずっと真っ暗な深夜を生きていかなきゃならない人もいる。で、人は何を怖がるかというと、それまでに出ていた太陽が沈んでしまうこと。自分が浴びている光が消える事をすごく恐れてしまうわけ。今の夏美ちゃんがまさにそうよね」
言われていることは何となくわかった。夏美は頷いた。
「あたしはね」と雪穂は続けた。「太陽の下を生きたことなんかないの」
「まさか」夏美は笑った。
「社長こそ、太陽がいっぱいじゃないですか」だが雪穂は首を振った。その目には真摯な思いが込められていたので、夏美も笑いを消した。
「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きていくことができたの。わかるわね。あたしには最初から太陽なんかなかった。だから、失う恐怖もないの」
ここがこの小説で一番言いたいことでしょうが、内容に入る前にかっこいいセリフですね。ほんとに考え付く作家さんは普段何考えてんねん。
僕が今ここまで読んだところでの感相としての雪穂の太陽に代わるものですが、自分の才能・美貌といったところなのかとおもいました。小学生のころから売春をさせられ、周りの環境には恵まれていなかったが、私にはそれを変えてこれるだけの力があった。私の周りには始めから大切な人物(太陽)はなかったから、失って怖い人物・事柄はない。といったところかなぁ。
そう考えると、雪穂に一番利用されたのは亮司ということになります。ドラマだと2人は好き同士ということらしいですが、それはおいておいて。
そうすると、子供の頃に亮司が父親を殺したのも、雪穂の策略なのでは?と考える事はできませんか。図書館でたまに会う少年に自分を助けさせる。2人の関係は最後までわかりませんが、最後に亮司が死んでも表情を変えなかった、雪穂の状態を考えるに太陽は亮司ではないと考えるのがだとうのような気がします。