「高齢」で?群馬大医学部不合格、主婦の入学請求棄却
筆記試験で合格者平均点を上回りながら、面接で高齢を理由に不合格にされたとして、群馬大医学部を受験した東京都目黒区、主婦佐藤薫さん(56)が同大を相手取り、入学許可を求めた行政訴訟の判決が27日、前橋地裁であった。
松丸伸一郎裁判長は「年齢により差別されたことが明白とは認められない」などと述べ、原告の請求を棄却した。
同大が「医師には知力・体力・気力が必要」などと説明していたことについては、合理性があるとした。
訴えによると、佐藤さんは同大医学部医学科の05年度の入試で不合格となったが、大学に得点を開示請求したところ、筆記試験のセンター試験と2次試験の合計点は合格者平均より10点以上高かった。
(読売新聞) – 10月27日13時4分更新
参考URL
http://allabout.co.jp/study/adultedu/closeup/CU20050725A/
正直、受からせてあげたいものです。
しかし、56歳でも合格できる程度の記憶力は保てるんですね。
人生に希望が持てます。
2024/12/09 追記
裁判結果
【群馬大学医学部入試】 年齢で不合格に? 判決が出ました
現在
https://mainichi.jp/articles/20181215/k00/00m/040/070000c
息子は野村総合研究所(NRI)から宇宙ベンチャー「ispace」(本社・東京)に
東京大学、同大学院で地球惑星物理学を専攻
経歴
https://dot.asahi.com/articles/-/130022?page=1
https://x.com/masasi_jp/status/1026100448409735169
55歳主婦、群馬大学医学部を提訴
55歳の女性(主婦)が、筆記試験の点数は合格者の平均点以上でありながら、年齢を理由に不合格にされたのは不当だとして、群馬大学を前橋地裁に提訴したニュースが注目されている。
父の死をきっかけに、医学部を目指してから3度目の受験。手ごたえはあったものの、結果不合格。大学側に入試成績開示を求めたところ、女性の筆記試験の点数は、合格者の平均点以上だったことがわかった。不合格の理由を問い合わせると「総合的に判断した」との回答があり、それでも納得できず食い下がると、担当者は「個人的な見解」とした上で、年齢が理由だったことをほのめかしたという。
群馬大学医学部のホームページには、「年齢制限はありません。制限があるとすれば、あなたの知力・体力・気力です。しかし、医師として活躍するには、6年間の課程に加えて、臨床研修2年間も含め卒後10年間くらいの経験が必要であることを考慮してください」と記載されている。
しかし、同大医学部は受験生の間で、「年齢が高いと厳しい」という噂がある。
30代で別の医学部に進学したA氏は、「特に群馬大は20代でも厳しいという噂もあるくらいなので、55歳主婦の方は大学選びに失敗したと言えます」と語っている。
報道によると、この女性は通信教育は利用したものの、予備校には通わず、ほぼ独学で勉強したという。もし予備校に通っていたなら、こういった噂は自然に耳に入ってきていただろう。
なお、群馬大学の担当者に本件について問い合わせたところ、「法廷であきらかにします」との回答。なお同担当者は、「年齢制限はない」と明言し、さらに「群馬大学医学部は、学士編入を実施し、幅広い年齢の学生を受け入れています」と語った。
高齢者を受け入れる学校
一方、高齢者を受け入れている医学部もある。例えば熊本大学では、医学部を卒業した66歳の男性が、2003年、医師国家試験に合格している。
また、医学部に限らなければ、多くの大学・大学院は、少子化の影響もあり、年齢を問わず広く門戸を開いており、真面目で勉強熱心な社会人学生は、教授陣にも好評で、さらに他の学生のやる気を刺激すると大学側から歓迎されている。
多額の税金投資-若者だけが受けられる特権?
医師を1人育てるためにかかる費用は、数千万~1億近くかかるとされている。国立大学法人の場合、その費用の多くが税金投入である。多額の税金がかかっているからこそ、1人立ちした後は、長く医療の世界で活躍、貢献して欲しい、という見解から、年齢制限を課すのは仕方ない、という意見は根強い。
もし「若い医師だけを育てたい」というのがその大学の方針ならば、大学はそのことをきちんと明言すべきだ。受験生は受験料を払って試験を受けている。もし年齢が不利になるという事実があるのなら、高齢の受験生が費やす時間もお金も労力も無駄になってしまう。
しかし、大学入学資格に年齢制限を設けても問題はないのか、疑問は残る。また、若い医師が高齢の医師より優れているかの判断は難しいし、長く医療の世界で活躍できるとも限らない。
学校選びの鍵-大学が求める人物像を見極めること
筆記試験の成績が良くても、面接などで不合格とされることは良くあることだ。
例えば社会人入試では、筆記試験免除のかわりに面接を重視するところが多い。これも各大学が求める人物かどうか、筆記試験の成績だけでは判断できないことを表わすものだろう。
前出のA氏によると、この女性が年齢を理由に不合格にされたことは「仕方がない」と言い、その理由を次のように語っている。「国立大学での医師養成には、税金が投入されていることもありますし、大学側としても来て欲しい人物像(若くて長くにわたって貢献してくれる、地元に残ってくれる、等)は持っていると思います」
さらに今回の問題については、「今回の件は大学側が「55歳という年齢が理由」と明言してしまった(?)ことに問題があって、あくまで面接で総合的に判断した結果、というべきだったのでしょう。私のまわりでも合格最低点は越えている不合格者はいます」と語っている。
年齢制限があるかどうか?を見抜く鍵
今回の件で大学の対応のまずさが明らかになったが、また受験生も大学を選ぶ際、大学が求めている人物像を見極めることが重要だ。
「年齢制限はない」としつつ、実際はあるかどうかを知るには「高年齢者が合格、在籍しているかどうか?」を大学に尋ねるといいだろう。実際に学校見学などに行って、学校や学生の様子を見るのも有効だ。医学部志望の社会人の場合、医師国家試験合格者の数とその年齢分布なども聞ければ、それが1つの指針になるだろう。
合否判断理由があきらかになる?訴訟のゆくえ
今回の訴訟により、群馬大学は法廷で、この女性が不合格になった理由を明らかにする必要がある。これにより、大学が言う「総合的な判断」がどういうものなのか、具体的に説明されるだろう。
私達からすれば、大学入試筆記試験の点数以外の部分で、合否がどのように判断されているのか、詳しく知るチャンスでもある。
続・医学部入試に年齢制限(前編)
年齢を理由に不合格?群馬大医学部訴訟、認められず
かねてから注目されていた訴訟の判決が出た。訴えていたのは、群馬大学医学部を年齢を理由に不合格にされたという東京在住の女性(56歳)。
同大を受験し、筆記試験では平均点を上回っていたものの不合格に。不合格の理由を群馬大学に問い合わせると「総合的に判断した」との回答があり、それでも納得できず食い下がると、入試担当者は「個人的な見解」とした上で、年齢が理由だったことをほのめかしたという。
判決が出たのは2006年10月27日。前橋地裁松丸裁判長は、「年齢により差別されたことが明白とは認められない」と原告の請求を棄却した。
2005年7月、「医学部受験に年齢制限は存在するか?」という記事を発表したところ、大きな反響があった。下記はその際実施したアンケートの結果である。
このアンケートによれば、約7割が年齢制限に反対しているが、一方、年齢制限を容認する意見を持つ人たちもいることが分かった。今回は容認派の意見を中心に紹介していこう。
少しでも長く働ける人に税金を!医学部受験は30代前半が限界
まずは年齢制限を容認する意見を紹介。
doctor Kさん(50代男性)
「医学部に入学すると、6年間授業や実習を行い、国家試験合格後臨床研修を2年行い、その後臨床経験を数年積んで初めて医者として通用するようになります。今回群馬大学を受験した方は56歳ということですから、一人前の医者として通用する頃には70歳という年齢になってしまいます。どんなに優秀であっても入学と同時に老眼もあり、機敏性に欠け、夜半にも続く実習をこなし、臨床実習を行うには体力の低下も考えねばならず、このような方を採用して医者としての教育を行うことは困難と考えられます。努力は認めますが、医者としての活躍をするには極めて難しいと思われます。医学部受験は30代前半が限界と思います。」
若僧さん(20代女性)
「55歳の方が医学部に入学したら、ストレートで卒業して61歳。2年間の研修を終えて63歳。2年間働いて65歳で定年ですか?(2年たって開業されるのなら別ですが。)申し訳ないですが、この方に国民の税金を使うよりもう少し長く働ける方に使ったほうがいいのではないでしょうか?医師不足が深刻は今、1人でも働ける医師が欲しいのが現実です。医学部は医師を育成する専門学校です。医療福祉を学びたいのなら、医学部でなくてもいいのではないでしょうか?他の学部と同じに考えるのはおかしいです。」
医師になるには、最短で約10年かかると言われている。まず6年間の修業年限を経て医師国家試験合格後、2年間の研修がある。さらに専門医に認定されるために2年から4年程度(学会により異なる)の臨床経験が必要だ。勤務医の場合65歳定年制があるため、この原告の女性が医師として世の中に貢献出来る期間はそれほど長くない。
「歳をとってから医学部に入りたいという気持ちは理解できる」という30代の女性は「一人前になるまでに10年かかるとは知らなかった。そうなるとせめて30代のうちに進学する方が、ゆくゆくはいいのかも。」と感想を送ってくれた。
また、50代~60代の人たちに話を聞くと、「歳を取ると老眼や体力・気力の衰えなどが嫌でもはっきり見えてくる。この年齢の医師を養成するよりは、やはり若くて可能性のある人に税金を使って欲しい」という意見が多く聞かれた。
人間性・医学に対する考え方なども重視
医学部入学に求められているものは学力だけではないと言う意見がある。
まさむねさん(40代男性)
「医学部の入学者に求められるべきものは学力だけではないはずです。
いくら合格者平均を10点上回っていてもそれだけでは医学部に入学できると考えるのは間違いです。人間性、医学に対する考え方など重要な点はどうだったのでしょうか。また、群馬大は年齢制限していないといっているのでそのとおりではないでしょうか。」
確かに学力が高いだけでは医師になれない。この意見にあるように、面接では人間性や医学に対する考え方も重要視されると言う。群馬大学医学部では、大学入試センター試験、学力検査、面接、小論文、調査書で入学者選考を行っており、今回原告の女性を不合格とした理由として、群馬大学は「総合的に判断した」と説明している。しかし、筆記試験が平均より10点上回っていたにもかかわらず、どの点で不合格になったのか、原告の女性が納得できる説明や情報開示はされておらず、いまだ不十分だ。
ちなみに群馬大学医学部は年齢制限について、2005年7月の時点で下記のように記述していた。(現在は違う表現になっている)
「年齢制限はありません。制限があるとすれば、あなたの知力・体力・気力です。しかし、医師として活躍するには、6年間の課程に加えて、臨床研修2年間も含め卒後10年間くらいの経験が必要であることを考慮してください」
面接に配点が高い大学は年齢制限アリの可能性?
今回の訴訟において、面接試験の採点方法や選抜条件など核心の部分は明らかにならず、群馬大学は面接結果の開示には応じなかった。群馬大学に限ったことではないのだが、面接試験を課す大学では、明確な判断基準は公表していない。
興味深い分析がある。30代で地方の医学部に進学したI氏は、自身のホームページ上で、面接に重きを置いている大学は、再受験生に厳しいと分析し、次のように書いている。
「情報公開が進む中、歳をとっているからといって筆記試験の得点を意図的に操作することは大学側としてもまずできないでしょう。ただし面接や調査書点は違います。歳とった受験生にマイナス100点の逆ゲタをはかせることなんて容易にできます。僕も新卒採用の面接官をやってたのでよくわかりますが、どんなに良い人でもアラをだすことは簡単にできますし、「失敗した」と相手に思わせることも簡単にできます。千葉大が配点300点の面接を導入してから合格者年齢が若返ったのも、ある意味当然と言えるのかもしれません。」(子持ち30歳の医学部受験より引用)
実際I氏は、志望校選定の際、30代以上の合格実績がある大学を第一条件にあげ、群馬大学はその条件を満たさないと同ページで書いており、受験生の間でも同大は20代の受験生さえ(合格は)厳しいと噂になっているという。
続:医学部入試に年齢制限(後編)
高年齢者に刺激されて、若い学生もモチベーションアップ
筆記試験の成績が良かったにもかかわらず、年齢差別で不合格にされたとして群馬大学医学部を訴えていた女性の請求が棄却された。
前編では、年齢制限は仕方がない、という意見を中心に紹介したが、後編では、年齢制限反対派の意見を紹介しながら学びと年齢の理想的な関係について考えていきたい。
水鏡さん(40代男性)
「年齢制限賛成派の論拠は『税金投入に対する社会貢献(リターン)が少ない』に集約されると思います。しかし、社会人入試の入学者の勉学意識に刺激されて、一般学生の勉学態度が向上したという話も良く聞きます。この副次的な『教育』効果の検証無しに『リターン』の判断は出来ないのではないでしょうか。医学教育に話を絞ると、学生、研修医の都市志向・高収入診療科への集中が顕著になり、その影響で医療過疎・小児科医等の不足、医師の質の低下が実際に問題視されています。これも税金を使った教育の『リターン』として甘受すべきなのでしょうか?」(以下略)
この意見で指摘している副次的な教育効果に注目したい。2005年から一般編入学制度を導入、それまであった「40歳未満」という年齢制限を撤廃し門戸を広げた東海大学医学部では、社会人経験者の目的意識の高さや勉強熱心さは、確実に若い人へ良い影響を与えているという。また、以前取材した明治大学の10代の学生は、「社会人学生と一緒に学ぶことで、クラス全体が活発になった。勉強になることがたくさんある。」と答えていた。
短期間であっても質の高い医師の存在こそ社会のために役立つ
ソフイーさん(40代女性)
「どこの大学にしろ、年齢制限で門前払いはそもそも大学創立の意味からしておかしい。大学は、学問探求の場ではなかったのですか?医学の勉強がしたい。しかも、優秀な人材が金目当ての医師養成機関の犠牲になっているような気がします。若くて心がけの悪い医者にこの先長く、長く見てもらってなき寝入りの患者を多く作るよりは、誇り高くしっかり勉強した医者にたとえ数年でも居てもらった方が社会の為には良いと思う。」
医師になってからの社会貢献できる年数について考えてみよう。確かに長期にわたり医師として活躍し、社会に貢献してもらう、という考えも理解できる。しかし期間が長ければよいと言うものでもない。この意見のように、質の高い医師が、例え短い期間であっても存在することに意味を見出す人は多いはずだ。豊かな人生経験を持ち、しかも50代になってから医師を目指し猛勉強の末医師になったという経歴の持ち主が、若い医師とは違った形で社会貢献できる分野は大いにあるだろう。特にその経歴そのものに勇気付けられる人は多いと思う。
高齢の学生を受け入れている医学部もある。1993年に、当時55歳の女性が秋田大学医学部に合格した例(卒業後、医師国家試験に合格、現在は内科医として勤務)や、2003年には前年に熊本大学医学部を卒業した66歳の男性が医師国家試験に合格した例などがある。
判決に怒り!日本は遅れている
次に国立大学及びこの判決に対する意見を紹介しよう。
ガーランドさん(30代男性)
「年齢制限がないとする大学側の姿勢は褒められたものじゃないと思います。事実、合格点に達しているにも関わらず理由も不明確(正式なものは未だない)なままに不合格にするなんて。多額の税金を投入して医師を育てているというのは理解しています。
しかし、それが前提ならなぜ受験資格に年齢制限を設けないのかは疑問です。体裁ばかり気にするお役所気分が抜けない国立大学は姿勢を正すべきではないでしょうか。」
こんこさん(30代女性)
「教育を受けるのになぜ差別されるのかが理解できません。海外の大学院には、定年後の人でも専門課程に通っている人が何人もいました。55歳であろうと、国公立大学の医学部の合格点を取るというのは相当の努力をされているからで、それをもって体力、知力等は十分クリアしているとの証明になるのではないでしょうか。10年かかったとしても、その時その方なりの進む道はあるはずです。裁判官の判断は、この国がいかに遅れているか示すものです。不当な差別がこの国からなくなる日は何世紀先のことでしょうか。」
医学部に限らず、全国の国立大学法人にお願いしたいことがある。どの大学も年齢制限はないと謳っているが、それなら受験者と合格者の年齢分布を誰もが見られるようにホームページ等で公開して欲しい。必要な情報を公開せずに「年齢制限はありません」と言われても国民は納得できない。
学びたい人が学べる環境と夢が叶う社会を
年齢制限を容認する意見と、反対意見を紹介してきた。最後に、遠回りをして医師になったという方の意見を紹介したい。
夢はかなう社会を実現したいですさん(30代男性)
「私も遠回り組で医者になりました。年齢制限するよりも、その個人の個性を生かして、医者の育成をする方がいいのではないでしょうか?患者は医者に話を聞いてもらい、自分にあった治療を望んでいます。まずはそこからスタートすべきではないかと思っています。人生経験があると、聞き上手にもなりやすいかもしれません。」
今回、読者の方からの意見や取材を通じ、それぞれの説得力ある意見に悩みつつも私の中では一つの結論に至った。それは、上記意見を送って下さった方のニックネームでもある「夢は叶う社会を実現したい」ということ。そのために不当な差別は取り除かれるべきだし、もし年齢制限が暗に存在するとしたら、やはりそれは不当な差別だと思う。
体力・知力を気力でカバーできることもある。本人が出来ると思っているのに、周囲がそのチャンスを与えないなんておかしい。出来るか出来ないか、それは本人が決めること。
誰でも、学びたい人が学びたい時に自由に学ぶことが出来る社会の実現がされたならば、どんな社会になるのか、少子高齢化が進み、高齢者の力が必要不可欠な現代において、人生経験豊かな人の知恵と経験が何を生み出し、何をもたらすのか、私はこの目で見てみたい。
そして年齢など気にせず、挑戦したい人にはいつでもその場が与えられ、その挑戦を受け入れる社会を、将来を担う子ども達に贈りたいと思う。